その言葉は、音だけが鳴り響いた
「あなたにとってのアイデンティティとは何ですか?」
そんな問いを受けたとしても、私はまだうまく答えられない。
自己同一性やセルフアウェアネスといった定義は降りてこなかった。
あるいは、よく知っているはずの顔を、何度見ても思い出せないような不思議な感覚。
この言葉は、聞いたことはある。でも、まだ「腑に落ちたことが無い」。
アイデンティティ(Identity)とは?基本定義と3つの側面
アイデンティティ(Identity)とは、「自分は何者であるか」という自己認識や、個人が持つ独自性、そして他者との区別性を指す言葉
アイデンティティの側面
側面 | 説明 |
---|---|
自己同一性 | 時間経過でも変わらない自分自身の連続性 |
社会における役割や属性 | 社会的な集合体に属することで得られる、自身の位置づけや役割 |
他者からの認識 | 周囲が抱くイメージ・期待・評価 |
”定義だけ”では満たされない違和感
定義を読むほど、私はその言葉から遠ざかった。
認知バイアス──とくに自己奉仕バイアスや確証バイアス──がフィルターとなり、「私が語る”私”」は常に歪んでいる可能性があるからだ。
自己奉仕バイアス(Self-serving bias):成功時は自身の能力・努力が要因と考える。一方、失敗時は運が悪い・誰かのせいといった外部要因と考える。
このように、自己都合で解釈する心理的偏りのこと。
確証バイアス(Confirmation bias):自身が持つ信念・仮説などを裏付ける情報ばかりを集める。一方、反対の情報を無視・軽視する。
このように、自己都合で思い込みを強化してしまう心理的偏りのこと。
コードで可視化する私──Identity インターフェース
それなら、自分の感覚で”仮の構造”を作ってみることにした。
アイデンティティという言葉を、プログラムにして分解してみる。
interface Identity {
name?: string[];
traits: string[];
coreBeliefs: string[];
constructedFrom: string[];
externalExpectations?: string[];
identityFatigueLevel?: number;
temporaryMasks?: string[];
inConflictWith?: string[];
lastUpdated: Date;
}
const myIdentity: Identity = {
name: ['てるひと', 'かわむら', 'わたし'],
roles: ['父', '書き手', '観察者'],
traits: ['内省的', '思考優位', '感情に敏感', '形にならないものを好む'],
coreBeliefs: [
'変わり続けることは自然である',
'曖昧さを恐れないこと',
'問いを持ち続けることが人間らしさ',
],
constructedFrom: [
'思考と感情の対話',
'社会との距離感',
'孤独の中で生まれた言葉',
'ブログに綴った軌跡'
],
externalExpectations: [
'ちゃんとした大人であること',
'わかりやすく、伝わる言葉を話すこと',
'社会に適応できること',
],
identityFatigueLevel: 68,
temporaryMasks: ['安心しているふり', 'わかっているふり', '誰かの言葉の受け売り'],
inConflictWith: ['”わかりやすさ”という呪縛', '社会的な成功像'],
lastUpdated: new Date(),
};
たったこれだけの構造なのに、少しだけ、自分が”見える”気がした。
でも同時に、このコードの中に、私のすべてがあるとは言えない。
補足
プロパティ名 | 意味・意図 |
---|---|
name | あなたが自分をどう呼ぶか、あるいは他人から呼ばれるラベル |
traits | 自覚している特性や傾向(肯定・否定混ぜてOK) |
coreBeliefs | 生きる上での信念・大切にしている価値観 |
constructedFrom | 今の自分ができてきた背景(人・経験・環境など) |
externalExpectations | 他人や社会から向けられていると感じる期待 |
identityFatigueLevel | 「わたしを保つこと」にどれくらい疲れているか |
temporaryMasks | 無意識に・あるいは必要に応じてかぶっている“仮面” |
inConflictWith | 今の自分と衝突している要素や葛藤 |
lastUpdated | この自己認識を最後に見つめ直した日時 |
Identity テンプレート:あなたの番です
interface Identity {
name?: string[];
traits: string[];
coreBeliefs: string[];
constructedFrom: string[];
externalExpectations?: string[];
identityFatigueLevel?: number;
temporaryMasks?: string[];
inConflictWith?: string[];
lastUpdated: Date;
}
- 上の
interface Identity
をCodePenでfork▶️自分の値を書き換え。 identityFatigueLevel
を0~100で入力し、今日の”私を保つ疲労度”を可視化。- コメント欄にtemporaryMasksを一つだけ共有してみてください。
セルフアウェアネスは「気づき」より「試す」ことで深まる。
”揺らぎ続ける存在”を前提にしてみる
私はこれまで、「アイデンティティがないこと」をどこかで恐れていた。
「私って何?」という問いに、明確に答えられないことを、未熟だと思っていた。
しかし今は、揺らぎそのものがアイデンティティだと考えている。
昨日は確かだった価値観が、今日は揺れ動いている──その動向なプロセスこそが「私らしさ」ではないか?
そして新たな疑問符が脳内を駆け巡る──
- 「アイデンティティとはセルフアウェアネスが機能しないと、たどり着けない思考領域ではないか? 」
- 「自我と人格形成による認知バイアス、確証バイアスという概念がある以上、アイデンティティとセルフアウェアネスとの整合性が取れないのではないか?」
この疑問符に興味のある方は是非読んでみてください👇

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